この記事を書いた人


内科、循環器専門医の資格を持ち、医師として数十年医療現場に立つ。
2026年冬頃、「尼崎」に内科・循環器内科・心臓内科のクリニックを開業予定。

胸痛・胸の痛み・胸の違和感とは

胸の痛みには多くの原因があり、必ずしも心臓に由来するものとは限りません。

以下に、主な原因をいくつか挙げますが、胸の痛みは重大な病気のサインである可能性があるため、早急な医療機関の受診を強くおすすめします。

胸の痛みは「大したことない」と自己判断せず、慎重に対応してください。

胸痛・胸の痛み・胸の違和感の原因

心臓に関係する原因(命に関わる可能性が高い)

運動時やストレス時に胸が締め付けられるような痛みで、数分で消えることが多い胸痛は、心臓の血流が少なくなった心臓の危険サインで、狭心症かもしれません。

この痛みが5分以上続く場合、心筋梗塞を起こして心臓の筋肉が壊れている可能性があります。

心筋梗塞では冷汗・吐き気・呼吸困難を伴うことも多く、命にかかわりますので、緊急受診をお勧めします。

狭心症や心筋梗塞では、左肩・左下顎、左わきの下の痛みや違和感であることもあります。

背中に痛みがあり、激烈で下に降りていく場合、大動脈解離の可能性もあり、緊急での検査・治療が必要となります。

まれですが、ウイルスなどが原因となって心臓の筋肉がダメージをうける心筋炎や、心臓の周りを守っている心膜に炎症が起こる病気で、胸の中央が痛く深呼吸や横になると悪化する心膜炎が原因のこともあります。

心臓エコーや心電図で「今すぐ命にかかわる」病気でないことを確認しましょう。

肺に関係する原因(命に関わる可能性あり)

急な呼吸困難、胸痛、咳・血痰がある肺血栓塞栓症があります。

長時間同じ姿勢の後に起こりやすい「エコノミー症候群」も肺血栓塞栓症です。

脚のむくみに左右差がある場合(左側のことが多い)や、静脈が浮いている場合や静脈瘤がある場合、脚から肺に血液が戻る静脈に血栓(血の塊)ができていて、これが肺に流れて詰まりやすくなっています。

命にかかわることがあります。

予防薬の処方も出来ますので、ご相談ください。

肺炎・胸膜炎でも胸の痛みがあります。

咳、発熱、呼吸時の胸痛・痛みが特徴で、風邪などが治っても、コロナ後遺症のように胸の痛みや違和感が続くことがあります。

初期にはロキソニン®などの痛み止めに効果がありますが、2週間以上過ぎると、効果がなくなっていきます。

治療薬も何種類かありますので、体質に合わせて処方させていただきます。

ご相談ください。

その他、若い痩せ型の男性に多い気胸(肺に穴があく)も、胸痛の原因です。

突然の鋭い胸の痛みと息苦しさが特徴です。

筋肉や骨、神経に関係する原因

狭心症・心筋梗塞の胸痛では、皆さん手のひらで痛いところを示されることが多いです。

一方、筋肉や骨、神経に関係する胸痛では、指一本から2本で「ここが痛い」と訴えられることが多く、ほぼ狭心症や心筋梗塞ではないと診断できます。

局所の圧痛あり、運動や外傷の後に起こる筋肉痛・肋骨の打撲や、咳などをきっかけに肋骨骨折をお紺されていることもあります。

鋭い痛みが身体を動かしたときに出現し、押すと痛いことが多いのが肋間神経痛です。

初期にはロキソニン®などの痛み止めに効果がありますが、2週間以上過ぎると、効果が薄くなっていきます。

治療薬も何種類かありますので、体質に合わせて処方させていただきます。

ご相談ください。

消化器に関係する原因

のど元からみぞおちの痛みでは、胃や食道に原因があることがあります。

胸やけ、食後に胸が熱くなるような痛みで、横になると悪化する場合は、胃食道逆流症(逆流性食道炎を含む)。

胸からみぞおちの痛みで食事との関連がある場合には、胃潰瘍が隠れていることもあります。

胃食道逆流症では、心房細動という脳梗塞の引き金になる血栓を創りやすい不整脈が起こることが多いので、診断と治療が必要です。

その他の原因

パニック障害や過換気症候群では、突然の胸痛、動悸、息苦しさや手足のしびれや胸の圧迫感があることともあります。

検査で命のいかかわるご病気でないことを確認して、ご安心していただきたいと思います。