この記事を書いた人

内科、循環器専門医の資格を持ち、医師として数十年医療現場に立つ。
2026年冬頃、「尼崎」に内科・循環器内科・心臓内科のクリニックを開業予定。
目次
がん治療後の“なんとなく不調”はなぜ起こる?
治療後のだるさや息切れには、心臓が少し疲れていることが隠れている場合があります。
抗がん剤や放射線は、がん細胞を攻撃する一方で、心臓の細胞や血管にも軽い負担をかけることがあります。
その結果、心臓の動きが弱くなったり、血流の流れがスムーズでなくなり、息切れ・倦怠感につながることがあります。
医学的には、がん治療関連心筋障害と呼び、治療介入が可能な病気とされています。
気になる症状は早めにご相談ください。
がん治療はどうして心臓に影響するの?
抗がん剤の一部では、心臓の細胞が傷むことがあります。
特に乳がん治療で最も使われるドキシルビシンなどのアンスラサイクリン系抗がん剤やHER2阻害剤では、心臓への影響が避けられません。
その他多くの抗がん剤でも、心臓に負担がかかり、息切れ、疲れやすさ、全身倦怠感を症状とする心不全が起こることが知られています。
こうした心臓の変化は、数か月〜数年後に症状として出てくることもあるため、治療後も心臓の見守りは大切です。
息苦しさ・動悸は心臓から?気づきたいサイン
息切れや胸のドキドキは、心臓のSOSのことがあります。
息苦しい
心臓が十分に血液を送り出せないと、階段や少しの動作で息切れしやすくなります。
動悸がする
脈が早くなったり、心臓のリズムが乱れることがあります。
特に、
- 今まで平気だった動作がつらい
- ドキドキが長く続く
というときは、当クリニックでの心臓のチェックをおすすめします。
抗がん剤治療後に血圧やコレステロールが「上がりやすい」理由
血圧やコレステロールが上がると、心臓への負担も増えます。
がん治療後は、
- 血管が一時的に弱くなる
- ホルモンバランスの変化
- 運動量の減少
などにより、生活習慣病が悪化しやすい状態になります。
これらは心臓病のリスクにも関わるため、治療後の生活管理はとても重要です。
不安や不眠が心臓症状としてあらわれることも
強い不安やストレスが続くと、交感神経という“体を緊張させる神経”が働きすぎて、
- 動悸
- 胸の圧迫感
- 息苦しさ
としてあらわれることがあります。
治療後の体は敏感になっているため、心のケアは心臓のケアにもつながります。
当クリニックでは、患者さんのお話をお聞きし、漢方薬も含め、薬の調合をさせていただきます。
心臓を守る生活習慣:がん治療後に特に大切なこと
心臓は、少しの習慣でしっかり守ることができます。
- 1日15〜20分の軽い散歩
- 塩分控えめの食事
- 野菜・魚・大豆製品を意識する
- 睡眠と休息をしっかりとる
こうした小さな積み重ねが、心臓への負担を減らし、治療後の回復を助けます。
特に、運動習慣は重要です。
抗がん剤の心臓への作用をやさしく解説
アンスラサイクリン系抗がん剤は、治療の過程で心臓を傷めます。
また、抗HER2薬は、心臓が傷ついたときの“修復力”を一時的に弱めることがあります。
どちらも、定期チェックを行えば早めに気づくことができ、治療の調整で改善する場合も多いです。
むくみ・体重増加は心臓からのサインのことも
手足のむくみや急な体重増加は、
- 心臓の働きが弱って血液がうまく戻れなくなる
- 体に水分がたまりやすくなる
といった状態で起こることがあります。
特に急に体重が2〜3kg増える場合は、“水分のため込み”が疑われるため、早めに受診をおすすめします。
不安と心臓症状の悪循環を断つには?
不安が強い → 動悸が出る → 動悸が心配でさらに不安に…という悪循環になる方はあなただけではありません。
深呼吸や軽い運動、睡眠改善などで自律神経が整い、心臓の症状が軽くなることも多いです。
「ひとりで抱えないこと」がとても大切です。
ぜひ、お話ください。
心臓の定期チェックはなぜ必要?
心臓の変化は、症状が出にくいまま進むことがあります。
そのため、
- 心エコー:心臓の動き方を確認
- 心電図:リズムの乱れをチェック
- 血液検査(NT-proBNP/BNPなど):心臓への負担を数値で確認
といった定期検査が、がん治療後の安心につながります。
腫瘍循環器科は“がん治療後の心臓の専門医”です
腫瘍循環器科は、
- 抗がん剤
- 放射線
- 免疫治療
など、がん治療の影響から心臓を守る専門の診療科です。
「どこまで心臓に影響があるの?」
「治療後、心臓のことが不安」
そのような方のために、当クリニックでは、治療前から治療後まで、心臓を総合的にサポートします。