この記事を書いた人


内科、循環器専門医の資格を持ち、医師として数十年医療現場に立つ。
2026年冬頃、「尼崎」に内科・循環器内科・心臓内科のクリニックを開業予定。

糖尿病とは

糖尿病とは、血液中の糖分(血糖)が高い状態が続く病気です。

通常、食事でとった糖は、膵臓が分泌するインスリンによって肝臓・筋肉・脂肪などに取り込まれます。

しかし、インスリンの分泌が減ったり、効き目が悪くなったりすると、糖尿病になります。

糖尿病にはいくつか種類がありますが、最も多いのが「2型糖尿病」です。

これは遺伝的な体質に加えて、肥満・運動不足・加齢などの生活習慣の影響で起きやすくなります一方で、膵臓からインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」は、免疫異常などによって起きる病気で、注射によるインスリン補充が必要となることが多いです。

主な症状と合併しやすい症状

2型糖尿病は、初期には症状がほとんどないため、健康診断で初めて指摘される方も少なくありません。

代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 疲れやすい、だるい
  • 感染症にかかりやすい、傷が治りにくい
  • 目がかすむ、視力が落ちる、手足のしびれなどの神経症状
  • 尿の回数が増える、多く出る
  • のどの渇きが強くなる、水分をよく取る
  • 体重が減るなど

長期間、血糖が高いまま放置すると、血管や神経が傷つき、心臓病、脳卒中、腎臓病、網膜症、足の血流障害など、さまざまな合併症で取り返しのつかないことになります。

治療の基本—生活習慣の改善

糖尿病治療の基本は、まず「食事」「運動」「生活習慣」の見直しです。

特に2型糖尿病では、肥満や運動不足、内臓脂肪の蓄積がインスリンの効きを悪くします。

ただ、生活習慣の改善だけでは不十分な場合も多く、その場合は薬物療法が併用されます

最新の治療選択肢

近年、糖尿病治療は大きく進歩しており、効果や安全性が高く、心臓・腎臓への保護効果も期待できる新しい薬も使われるようになっています。

SGLT2阻害薬(フォシーガ®・ジャディアンス®)

腎臓に働きかけ、尿と一緒に余分な糖を体外に排出することで血糖を下げる薬です。

インスリンとは違う作用機序のため、インスリン抵抗性やインスリン分泌能の低下があっても効果を発揮します。

さらに、最新の大規模な研究から、SGLT2阻害薬は心不全や慢性腎臓病など心血管・腎臓の合併症のリスクを低下させる効果があると報告されていますし、「若返り薬」として、研究も進められています。

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)

食事後の血糖上昇を抑えるインスリン分泌を促しつつ、食欲を抑えたり、胃の動きをゆるやかにしたりして血糖と体重の両方をコントロールしやすくする薬です。

近年では飲み薬も使えるようになっています。

従来からある薬、インスリン療法など

長年使われてきた経口薬や注射のインスリン療法も重要です。

例えば、メトホルミンというお薬は、血糖値を改善するだけでなく、若返りの薬としての研究も進められています。

なぜ「最新の薬」が注目されるのか

最近の研究・臨床試験により、SGLT2阻害薬(フォシーガ®・ジャディアンス®)は、単に血糖値を下げるだけでなく、心臓・血管や腎臓など、合併しやすい病気のリスクを下げる効果があることが示されてきました。

糖尿病治療では、心不全、腎機能低下、心筋梗塞、脳卒中などの防止の重要性が再認識され、循環器専門医が積極的に治療を行う、命にかかわる病気を予防するという流れになっています。

これまで「糖尿病=血糖コントロール」のみを重視する時代から、「全身の健康を守るための包括的な治療」へと考え方が変わってきています。

患者さん一人ひとりの年齢、合併疾患、腎臓の状態、体重などを踏まえた「オーダーメイド治療」が現在の主流です。

大切なこと—継続と生活全体のバランス

どんなに良い薬があっても、それだけで糖尿病が「治る」わけではありません。

生活習慣の改善、定期的な受診・検査などを続けることが何より重要です。

薬にはそれぞれ特徴・利点・注意点があります。

薬の種類や使い方は患者さんの状態によって異なりますので、定期的に相談しながら、最適な治療を一緒に考えていきましょう。