この記事を書いた人


内科、循環器専門医の資格を持ち、医師として数十年医療現場に立つ。
2026年冬頃、「尼崎」に内科・循環器内科・心臓内科のクリニックを開業予定。

高脂血症とは

高脂血症(脂質異常症)とは、血液中のコレステロールや中性脂肪が正常より高くなった状態を指します。

自覚症状はほとんどありませんが、放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる疾患につながるため、早期の発見と治療が非常に重要です。

血液中の脂質は主に「LDLコレステロール(悪玉)」「HDLコレステロール(善玉)」「中性脂肪(トリグリセリド)」の3つが中心です。

特にLDLコレステロールが高い状態は動脈硬化の進行に直結し、心臓病の最大の危険因子とされています。

中性脂肪が高すぎる場合も心臓病の危険因子となります。

高脂血症の原因には、食生活や運動不足、肥満、喫煙、睡眠不足といった生活習慣が大きく関わっています。

また、遺伝によって若い頃からLDLコレステロールが非常に高くなる「家族性高コレステロール血症(FH)」のように、生活改善だけではコントロールが難しいケースもあります。

また、全身がだるいなどの症状を伴う高脂血症では、甲状腺機能低下症である可能性があり、甲状腺の治療で改善します。

治療はまず生活習慣の改善から始まります。

バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、体重管理などは、どの患者さんにも必ずお勧めする重要な対策です。

それでもLDLコレステロールや中性脂肪の値が目標まで下がらない場合、薬物療法を組み合わせていきます。

現在、脂質異常症の治療に使われる薬剤にはいくつかの種類があります。

最も基本となるのが「スタチン」という薬で、肝臓で作られるコレステロールを抑えることでLDLを効果的に下げ、心血管イベントを減らすことが証明されています。

スタチンだけで不十分な場合には、小腸でのコレステロール吸収を抑える「エゼチミブ」を追加することで、さらに強力なコントロールが可能になります。

より重症の方や家族性高コレステロール血症の患者さんには「PCSK9阻害薬」という注射のお薬も選択肢になります。

LDLが劇的に低下するため、近年注目されている治療ですが、非常に高価なのでご相談させてください。

また、中性脂肪が高い場合は「フィブラート系薬」や「EPA製剤」が有効です。

高脂血症は「症状がないから大丈夫」と思われがちですが、気づかないうちに動脈硬化が進行します。

特に高血圧・糖尿病・喫煙習慣がある方、ご家族に心臓病の方がいる場合は、より積極的な管理が必要です。

当院では、患者さん一人ひとりのリスクに応じた最適な治療を一緒に考え、長期的な健康維持をサポートしています。

健康診断で指摘を受けた方や、生活習慣が気になる方は、お気軽にご相談ください。