この記事を書いた人

内科、循環器専門医の資格を持ち、医師として数十年医療現場に立つ。
2026年冬頃、「尼崎」に内科・循環器内科・心臓内科のクリニックを開業予定。
大動脈瘤とは
大動脈瘤とは、心臓から全身に血液を送る大動脈の一部が風船のように膨らんでしまう状態を指します。
大動脈は体の中でも特に大きな血管であるため、瘤が大きくなると破裂する危険があります。
破裂すると命に関わるため、症状がなくても定期的な検査と適切な管理が非常に重要です。
大動脈瘤の管理でまず重要なのは血圧のコントロールです。
最新のガイドラインでは、血圧を130/80 mmHg 未満に保つことが推奨されており、これは大動脈瘤の進行を抑えるうえで第一選択とされています。
日常生活では、塩分を控えた食事や適度な運動、体重管理も血圧管理の助けになります。
薬物治療も大動脈瘤の管理に使われますが、種類や効果は原因によって異なります。
まずβ遮断薬については、マルファン症候群という遺伝性の疾患に伴う大動脈瘤では、血圧を下げるとともに血管の負荷を軽減することで瘤の拡大を抑える効果が確認されています。
ただし、通常の大動脈瘤ではまだ十分な効果が確認されていないため、患者さんの状況に応じて使用が検討されます。
次にACE阻害薬は、血管の炎症を抑え、血管壁の平滑筋の細胞死を減少させることで、大動脈瘤の拡大を抑える可能性があるとされています。
また、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、血管の成長因子であるTGF-βの働きを調整することで、瘤の進行を抑える作用が期待されています。
どちらもまだ研究段階の側面もありますが、血圧管理と合わせて用いられます。
大動脈瘤は、症状が出にくい病気です。
しかし、定期的な画像検査でサイズの変化を確認し、適切なタイミングで治療方針を決めることが重要です。
血圧の管理や薬物治療、場合によっては手術による治療も含め、医師と相談しながら安全に生活していくことが大切です。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた血圧管理や薬物治療、検査スケジュールをご提案し、安心して生活できるようサポートしています。
大動脈瘤の診断を受けた方も、まだ症状がない方も、定期的なチェックを続けることが命を守る第一歩です。